【SF考証】カメラの進化

現代のカメラ

カメラはフィルムカメラデジタルカメラと進化し、推移してきた。 そして、現在はスマホのカメラが全世界のカメラの圧倒的総数を誇る。

スマホのカメラ機能は、スマホ自体と一体化しており、もはや、カメラの定義自体が揺らいでいるとも言える。 レンズの性能自体は、ハードウェアの限界ゆえに従来のカメラに劣るが、 ソフトウェアによる改良によって、そのハードウェアの垣根を超えるまでの出来栄えを誇ることも可能である。

カメラの役割と需要

先進国においては、現代はほぼすべての人間がカメラを手にしているといっていい。 しかも、どの場所にも携帯可能な形で持っている。 これによって、個人の生活の記録だけでなく、報道の手段にもなっている。 SNSの普及もカメラの需要を支えている。

そのような需要のもと、カメラに求められているのは、性能や写真の美しさよりも、構図やシチュエーション、写真自体の意外性のほうが重要視されているとも思える。 また、ドローンの性能向上と普及によって、現代の映像作品ではドローンによる空撮は欠かせないものになっている。 これはカメラ自体の性能や小型化の恩恵とともに、そのほかの周辺技術の発達による相乗効果といえる。

ただし、これらの技術によって撮影されるものは、全く新しいものではなく、 従来では大規模で高価な機材、人材が必要だったものが、より安価で手軽に、個人レベルでも可能になったことが重要な点でもある。 つまり、カメラの役割自体はまだそれほど変化はしていないとも言える。 今後、全く新しいカメラの用途、需要が生まれる可能性があるのか?

カメラの未来を変える要素

カメラの未来を支える要素は以下のように捉えられる。

  • 性能
    • 画質、画角、ISO感度、フォーカス速度など
  • 小型化
    • センサ、レンズ、モータの小型化
  • 用途
    • 記録、報道、創作、調査・探索など

カメラの未来を今後支えていく技術は以下のものが考えられる。

  • センサー技術
    • ハードウェアの進化、センサ素子
  • 情報処理技術
    • 画像処理技術、AI技術(認識、合成、補正、変換)
  • インフラ、通信技術
    • SNSなどのサービスインフラ、5Gなど通信の高速化
  • ロボット技術
    • ドローン、探索ロボット

100年後はどうなる?

■主観的なカメラ(携帯するカメラ)

個人レベルでは、基本的にすべての生活を映像で記録する。 必要なシーンを明示的に記録する際は、その場で操作するか、あとから生活のそのシーンを検索するようになる。 ハードウェアはメガネ型が最も一般的だが、ペンダント、首輪型などがある。

この技術を支えるのは、カメラの進化だけでなく、通信の進化、サーバーインフラの進化、検索技術の進化がある。 特に映像、画像の検索が、AIによって可能になることで、撮りっぱなしで記録してあとから利用することが可能になる。 サーバー側は量子コンピューターの進化もあって、AIによる検索をさらに支えると思われる。

■客観的なカメラ(他人のカメラ)

客観的に自分の姿を写した映像を手に入れるための手段として、他人が撮影した映像を利用する方法もある。 これは検索技術を流用して、他人の映像からも自分を探索することが可能になるかもしれない。

ただし、これは法整備も必要な技術である。相互に記録し、それを政府さえも利用できることで、 それがもたらすのは秩序なのか抑圧なのかは、判断が難しいところ。

■客観的なカメラ(身体を拡張するカメラ)

前述したようなウェアラブルなハードによる記録では、基本的には本人の身体を大きく超える形では記録ができない。 そのため、現在は三脚、自撮り棒、ドローンが利用される。 ドローンの進化によって、規制が難しいレベルでの小型ドローンが携帯可能になる。 そのため、個人による利用を抑制するために、観光地には現地で用意されたドローンが至るところで用意されており、必要に応じて操作、撮影が可能。 前述したサーバー技術によって、撮影した画像、映像は通信経由で手に入る。 専属カメラマンが同行するように、現地の飛行ドローン、歩行ドローンが必要に応じて写真を撮ってくれる。

■ヴァーチャルなカメラ

画像処理技術が進化することで、もはや誰もその真偽がわからないレベルでの合成写真が可能になる。 本人が現地に行かなくても、自分の3Dモデルと現地のモデルを利用することで、いつでも写真が作成可能になる。 つまり、現地で大変な思いをして、アングルの凝った写真を残す必要はほぼなくなり、旅の体験自体に集中できるようになる。 きれいな映像はあとから作ればよくて、現地に赴いた体験や実績が重要となる。

最後に

カメラに限らないが、カメラ以外の周辺技術によって、カメラ自体の立ち位置が変化すると思われる。 今回はカメラというハードウェアの進化というより、撮影自体がどう変化するのかに焦点があたる形となった。 個人の手に行き渡ったカメラが、今度は全体で管理される形となり、個々人がカメラを大きく意識することはなくなっていくのではないかと推測する。